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ノーマン・マクラレンについて
ノーマン・マクラレンについて

          東京工芸大学芸術学部アニメーション学科 准教授・権藤俊司著

NFBが産んだ実験映画の巨匠ノーマン・マクラレン(1914?87、Norman McLaren)。

人間をコマ撮りするピクシレーション(『隣人』)やカメラレスアニメーション(『色彩幻想』『線と色の即興詩』)など、彼によって開発された技術は数え切れない。それらは単なる手段ではなく、むしろ目的そのもの――新しい映像表現への飽くなき追求――だった。

だが、「実験映画作家」の堅苦しいイメージはマクラレンには無縁である。
マクラレンにとって映画は「ダンスの一形態」だった。晩年の『パ・ド・ドゥ』や『ナルシス』のように直接バレエに題材を取った作品だけではない。抽象パターン(『色彩幻想』『点』)や文字(『算数あそび』)でさえも、マクラレンの手にかかれば生き生きとした振り付けで踊り出す。

なぜダンスなのか?
一つは音楽との結びつきである。マクラレンは1920?30年代のヨーロッパで発展した実験アニメーション(オスカー・フィッシンガー、アレクサンドル・アレクセイエフ)を受け継ぎ、音楽構造に映像のモデルを求めた。「私の作品の半数は音楽のスピリットを表現した」と彼は回想している。重要なことは物語性ではなく、音と映像の関係性だった。
もう一つはダンスの持つ運動性である。アニメーション(=命を吹き込むこと)の語源通り、あらゆる物が動きを与えられ、人格を獲得する。「動きこそが映画の本質である」とマクラレンは考え、彼の全作品はそこに集約される。


補記:マクラレンの1933年?85年までの作品(82本の映画、53本の実験映像)が、ユネスコの三大遺産事業の一つである「世界の記憶(Memory of the World)」に登録されました(2009年7月31日、ユネスコ発表)。

(第10回カナダ・アニメーション・フェスティバル、カナダ国立映画制作庁創立70周年 記念パンフレットより)

copyright@Canada Animation Festival (CAF). All rights reserved.
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[2009/12/07 00:55] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top
NFBの生みの親 ジョン・グリアスン
NFBの生みの親 ジョン・グリアスン

          東京工芸大学芸術学部アニメーション学科 准教授・権藤俊司著

彼がいなければ、マクラレンもNFBも存在しなかった。
ジョン・グリアスン(1898?1972、John Grierson)はマクラレンと同じスコットランド出身。英ドキュメンタリー映画運動の中心人物である。初めて「ドキュメンタリー」を提唱し、20?30年代にEMB(帝国通商局)やGPO(中央郵便局)の映画部長として多くのドキュメンタリーを制作した。

マクラレンとの出会いは1936年、グラスゴーアマチュア映画祭で審査員を務めた時である。二本の作品を応募したマクラレンに対して、『カメラで大騒ぎ』を「技術的には優れているが、構成がない」と批判し、もう一本の『カラーカクテル』に一等賞を与えた。授賞式後グリアスンはマクラレンをホテルに呼び出し、こう告げたという。
「君には豊かな想像力があるが、手綱が欠けている。学校を終えたらロンドンのGPOに来たまえ。君に規律をたたき込んでやる」
この一言がマクラレンのキャリアを決定した。同年、GPOに入局したマクラレンはフィルム編集を手始めに映画の作法を学び、やがて一人前の映画作家に成長した。

一方、グリアスンは1938年にカナダ政府から委嘱を受け、映画行政の報告書を作成。その結果翌年NFBが創設され、初代局長に就任したグリアスンはイギリス時代のスタッフを呼び寄せた。ニューヨークで活動していたマクラレンにグリアスンから打診が来たのは1941年のことである。
だが、マクラレンには広告映画社カラヴェルフィルムとの契約がネックだった。グリアスンはカナダ→アメリカの外交ルートで圧力をかけ、かくしてマクラレンのNFB入りが実現した。

グリアスンは映画の社会的機能を重視し、政府の広報映画という形で大衆教育を目指した。その理想がNFBを産んだ。彼はアニメーションの力を認めていた。マクラレンに対して自由な実験を許し、政治的外圧から守りさえした。彼こそはカナダアニメーションの陰の立役者である。

(第10回カナダ・アニメーション・フェスティバル、カナダ国立映画制作庁創立70周年 記念パンフレットより)

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[2009/12/07 00:53] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
カナダ国立映画制作庁(NFB) 70年のあゆみ
カナダ国立映画制作庁(NFB) 70年のあゆみ

          東京工芸大学芸術学部アニメーション学科 准教授・権藤俊司著

アニメーションの歴史の中で、NFBは特別な存在である。
何よりもそこにはノーマン・マクラレンがいた。
アニメーション、とりわけ実験アニメーションの分野でマクラレンほど知られた作家は極めて珍しい。彼の作品は実験映画の狭いゲットーを飛び越えて、幅広い分野の芸術家に影響を与えてきた。それを可能にしたのはマクラレンの個人的資質だけではなく、NFBという組織の力だった。
そもそもフィルム制作という資金と時間を要求する領域で、非商業作家の置かれた立場は非常に脆弱である。ところがマクラレンの場合、NFBの中で守られ、自由な制作活動が保証されていた。また、映画祭や各地のフィルムライブラリーを通じて、世界に向けて彼の作品は発信された。「民主主義国家における宮廷芸術家」(ジャンナルベルト・ベンダッツィ-イタリアのアニメーション史家)と言われるゆえんであり、NFBはいわばパトロンの役割を果たしたのである。
マクラレンだけではない。
砂アニメーションやペイントオングラスアニメーションのキャロライン・リーフ(『がちょうと結婚したふくろう』『ザムザ氏の変身』)、ピンスクリーン・アニメーションのジャック・ドルーアン(『風景画家』)、ビーズや透過光を駆使した特殊撮影技法の名手イシュ・パテル(『ビーズゲーム』『死後の世界』)。作家毎、あるいは作品毎に異なる表現が開発され、観客を魅了した。統一したカラーがないことそのものがNFBアニメーションの旗印であり、その質・量共にまちがいなく20世紀後半のアニメーションをリードしていた。
最もユニークな点はNFBが国立機関ということである。最近は日本でも行政によるコンテンツ支援の必要性が叫ばれているが、NFBは自らが主体として映画制作を行った。かつてのソ連や東欧諸国のような共産主義体制ならともかく、資本主義国家としては極めて異例である。しかも、そこで生み出された作品には前述のように実験的なものも多く含まれていた。そんなことが可能になったのはなぜか。

ここでNFBの歴史を少し振り返ってみたい。
NFBの設立は1939年。カナダにおける映画制作・配給・上映の調整機関としてスタートした。だが、発足直後に第二次世界大戦が勃発し、戦時下のプロパガンダ映画制作が活動のメインとなった。
1941年にマクラレンが入ってきたとき、アニメーションに要求されたのは実用性である。マクラレンは数名のアシスタントと共に、戦勝国債の宣伝や倹約のメッセージを伝える国策映画の制作、さらには実写映画のタイトルアニメーションや地図の図解映像を担当した。
折しもアメリカでは『ファンタジア』や『ピノキオ』でセルアニメーションが技術的・芸術的頂点に達していた。その一方、NFBでは様々なアニメーション技法(切り紙、物体、人形、フィルムへのダイレクトペイント)が採用された。
また、マクラレンは作家と教育者の両面で活動した。マクラレンがリクルートし、育てた才能の中には、後にイギリスで『イエローサブマリン』を作るジョージ・ダニング、マクラレンの片腕イヴリン・ランバート(『二羽の小鳥』)、早熟の天才ライアン・ラーキン(『ストリートミュージック』)らがいた。数々の受賞歴を持つジャック・ドルーアン、キャロライン・リーフ、ピエール・エベールらもその一人である。
1945年の戦争終結でNFBの役割はさらに変化した。国内外に向けた、映画によるカナダ文化の普及、それが新たな使命だった。

これには説明が必要である。
カナダの文化的アイデンティティには不安定な要素が大きい。
アメリカが「民族のるつぼ」なら、カナダは「民族のモザイク」と呼ばれる。総人口の8割を占める英語系住民と少数派の仏語系住民が混在し、かつ両者は分離傾向にある。カナダで英語と仏語を公用語とする二言語政策をとっているのはこのためである(NFBも仏語ではONFが正式名称となる)。カナダのことをまずカナダ人自身に知らせる必要がある。
また、カナダは常に隣国アメリカの影響力にさらされてきた。アメリカの娯楽文化の流入を止めることは不可能であり、ましてやハリウッドの大作映画に正面から対抗するのは非現実的である。その代わりに、NFBはドキュメンタリー映画や短編アニメーションというジャンルに力を注ぎ、カナダ文化を海外に発信した。
結果として、この文化政策が収益にとらわれないアニメーション制作を可能にしたのである。

その後、1955年にNFBは首都オタワからケベック州モントリオールに移転した(ケベックはカナダで唯一仏語系住民がマジョリティの州)。
そして、それに続くターニングポイントが1967年の仏語スタジオ(フレンチアニメーション・スタジオ)設置である。
仏語スタジオの責任者となったルネ・ジョドワンは、マクラレンの理想を受け継ぎ、実験的方向性を推し進めた。それが本格的に開花するのは1970年代で、リーフ、ドルーアン、あるいは立体アニメーションのコ・ホードマン(『砂の城』)らが所属し、数々の傑作が誕生した。
仏語スタジオの特徴としては、社会的なテーマ意識の高さがあり、その傾向は最近のミシェル・クルノワイエ(『ハット』)やマルティーヌ・シャルトラン(『ブラックソウル』)にも現れている。また、女性作家の活躍という点でも仏語スタジオは世界の先駆けである。
もう一つのスタジオ、英語スタジオ(イングリッシュアニメーション・スタジオ)で目につくのが、カイ・ピンダルやズラトコ・グルギッチ、ジャネット・パールマンといった軽妙な作風のセルアニメーション作家たちである。その一方で、キャロライン・リーフ(仏語スタジオから移動)、イシュ・パテル、ウェンディ・ティルビーら多様な表現を追求するタイプの作家も活躍している。
この他、70年代に設立された支局の一つであるウィニペグスタジオでは、モントリオールとは違ったタイプの作家が台頭した。『仕事をくれー!』のブラッド・キャスラーや『ビッグ・スニット』のリチャード・コンディ、『猫帰る』のコーデル・バーカーなど、ハリウッドのカートゥーン(ルーニーテューンやテックス・アヴェリーなど)に近いギャグアニメーションは、従来のNFBでは考えられない作風である。

話をまとめよう。
マクラレンと彼に続くNFBの作家たちは、アニメーションというメディアがシリアスなテーマを十二分に扱えることを証明した。また、作家主義ともいわれるように、作家個人の声に従うことの必然性を提示した。この二点はアニメーションを見る側の意識を変革しただけでなく、世界中の若い作家たちの指標となった。そして、多くの作家たちがNFBを目指した。
それが他ならぬ国の機関で組織的におこなわれたこと。これこそがNFBという存在をユニークなものとした歴史的意義である。
1980年代以降、日本を含む世界各地で、NFB作品から直接・間接に影響を受けた作家が数多く登場している。実験アニメーションはもはやNFBの専売特許ではなくなり、そのことがNFBの唯一性を相対的に低下させたのは歴史の皮肉かもしれない。だが、それは「映画によるカナダ文化普及」がもたらした実りでもある。

(第10回カナダ・アニメーション・フェスティバル、カナダ国立映画制作庁創立70周年 記念パンフレットより)

copyright@Canada Animation Festival (CAF). All rights reserved.

テーマ:映像・アニメーション - ジャンル:学問・文化・芸術

[2009/12/07 00:49] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
CAF10実施報告
平成21年度文化庁委託事業
(平成21年度海外との共同創作活動を通じた国際文化交流事業)
「日本とカナダのプロデュース力」を考える日加国際交流事業
国際シンポジウムおよびNFBプロデューサー・ティーチイン
-カナダ国立映画制作庁創立70周年記念-

※ ※ ※ ※ ※

第10回カナダ・アニメーション・フェスティバル (CAF10)
NFBアニメーション特集上映
-カナダ国立映画制作庁創立70周年記念-
-日加修好80周年記念-

実施報告書

B)実施結果

1.実施事業一覧
平成21年度文化庁委託事業
「日本とカナダのプロデュース力」を考える日加国際交流事業
国際シンポジウムおよびNFBプロデューサー・ティーチイン
?カナダ国立映画制作庁創立70周年記念?
 ■ 国際シンポジウム「日本とカナダのプロデュース力」(9月24日)
 ■ NFBプロデューサー・ティーチイン(9月21日)
   「プロデュース力とは」NFBの企画開発力と国際共同制作力
   <東京藝術大学大学院映像研究科 公開講座 馬車道エッジズ>
 ■ カナダ・アニメーション・フェスティバル in 京都(9月25日?27日)
 ■ NFBプロデューサーらと若手作家の茶話会(9月23日、非公開)
 ■ CAF10・NFB70周年記念パンフレットの刊行

CAF自主事業
カナダ・アニメーション・フェスティバル CAF10、NFB特集上映
?カナダ国立映画制作庁創立70周年記念?
?日加修好80周年記念?
 ■ CAF10?NFBアニメーション特集上映@短編映画館トリウッド(9月19日?10月16日)
 ■ オスカー受賞プロデューサーらのトークイベント(9月20日、トリウッド)

作品提供事業、広報協力関係などのパートナー事業
 ■ KYOTO Cross Media Experience 2009 
    CGアニカップ 日・仏親善試合(9月27日)
    国際クロスメディアカンファレンス
    「コンテンツとトポス (都市性) ?京都におけるデジタル映像の振興?」(9月30日)
    ネットワークミーティング(10月1日)
   主催:KYOTO Cross Media Experience実行委員会
      (近畿経済産業局、京都府、京都市、DoGA等)
   ※審査員/講師派遣(タンゲ氏)

 ■ 東京藝術大学大学院学生の作品講評会       
   NFBプロデューサー・ティーチイン I(9月21日)
   非公開・東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻学生9名参加
   主催:東京藝術大学大学院映像研究科
   ※講師派遣(ページ氏、タンゲ氏)

 ■ 第3回こどもアニメーションフェスティバル(10月25日、31日)
   主催:こどもアニメーションフェスティバル実行委員会(女子美術大学、長野県高山村等)
   来場者:約100名
   ※上映作品の提供 

 ■ Clark Theater 2009(10月30日?11月3日)
   主催:北大映画プロジェクト実行委員会2009
   来場数:300名
   ※上映作品の提供

 ■ 放送「シネフィル・ショートショート#110 夏休みアニメーションコレクション」 
   (8月23日、27日/洋画★シネフィル・イマジカ)
   ※放送作品の提供

 ■ 放送「NFBショート:女性作家選」 
   (11月6日、14日/カートゥーンネットワーク)
   ※放送作品の提供

 ■ イントゥ・アニメーション5・横浜 (10月16日?19日)
   主催:日本アニメーション協会
   ※広報相互協力

 ■ 劇場公開「ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション」 
   (9月19日?11月6日/シネマライズX)
   ※広報相互協力

 ■ DVD-BOX 「ノーマン・マクラレン マスターズ・エディション」と
   DVD「ノーマン・マクラレン 傑作選」の発売 
   (8月5日/ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント)
   ※広報相互協力

2.来場総数: 1,682名
 ■ 国際シンポジウム「日本とカナダのプロデュース力」
    シンポジウム 134名
    懇親会 約80名
 ■ NFBプロデューサー・ティーチイン 84名
 ■ カナダ・アニメーション・フェスティバルin京都
    トークショー 37名
    上映会 304名
 ■ NFBプロデューサーらと若手作家の茶話会 11名
 ■ CAF10-NFBアニメーション特集上映@トリウッド 1,032名

3.実施体制
主催: カナダ・アニメーション・フェスティバル事務局
    東京藝術大学大学院映像研究科(NFBプロデューサー・ティーチイン共同主催)
共催: カナダ国立映画制作庁
    カナダ大使館
    横浜市開港150周年・創造都市事業本部(NFBプロデューサー・ティーチイン共催)
    京都国際マンガミュージアム(カナダ・アニメーション・フェスティバル in 京都共催)
協力: コ・フェスタ2009パートナーイベント
    BankART1929(NFBプロデューサー・ティーチイン協力)
    KYOTO CMEX 2009/CGアニカップ 日・仏親善試合
    トリウッド
協賛: コロムビアミュージックエンタテインメント株式会社
    ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
    東京国際アニメフェア2010

※ CAF10運営チーム
  事務局代表 伊藤裕美 (CAF事務局)
  企画アドバイザー 大槻貴宏 (CAF事務局)
  広報 大川愛子 (トリウッド)
  デザイン、Web 鴫原孝江 (デザイン・スナイプ)
  映像 山本達也 (Pmonslabo)
  パンフレット 伊藤裕美、山本達也
  パンフレット特別協力 権藤俊司 (東京工芸大学)
  監査 大槻由佳里 (CAF事務局)

※ 運営協力(敬称略)
カナダ国立映画制作庁 ジェームス・ロバーツ、イザベル・ドゥベルフィーユ
カナダ大使館 中山多恵子、栗原知紀

東京藝術大学大学院 岡本美津子(映像研究科アニメーション専攻)
京都国際マンガミュージアム 上田修三、應矢泰紀



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[2009/12/06 20:39] | - | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
CAF10実施報告<総括>
平成21年度文化庁委託事業
(平成21年度海外との共同創作活動を通じた国際文化交流事業)
「日本とカナダのプロデュース力」を考える日加国際交流事業
国際シンポジウムおよびNFBプロデューサー・ティーチイン
?カナダ国立映画制作庁創立70周年記念?

※ ※ ※ ※ ※

第10回カナダ・アニメーション・フェスティバル (CAF10)
NFBアニメーション特集上映
?カナダ国立映画制作庁創立70周年記念?
?日加修好80周年記念?

実施報告書

C)「日本とカナダのプロデュース力」を考える日加国際交流事業の総括

1.カナダ人ゲストの発表のポイント

■NFBとは・・・変わらぬ使命と近年の変化

NFBは、映像が“カナダ”を内外に周知するのに最適な手段と考えたカナダ連邦政府により1939年に設立された。イギリスのドキュメンタリー映画運動の中心で活躍していたジョン・グリアスンが呼び寄せられ、NFBの基礎が築かれた。カナダのイメージを広めるという使命は、NFBの設立理由であり、今日に至る存在意義でもある。
  NFBの略史・・・CAF10記念パンフレットより
  カナダ国立映画制作庁(NFB) 70年のあゆみ
  NFBの生みの親 ジョン・グリアスン
  ノーマン・マクラレンについて


NFBは、連邦遺産省(Department of Canadian Heritage)に属し、次のマンデイトを規範とする:
 ◎ カナダに固有で、文化的多様性に富み、高水準の(挑戦的な)視聴覚作品を制作、
   流布し、カナダの全体像を国内外に広めること。
   The NFB's mandate is to produce and distribute distinctive, culturally diverse,
   challenging and relevant audiovisual works that provide Canada and the world
   with a unique Canadian perspective.


 ◎ 社会的な意義があり、革新的な視聴覚作品を制作・配給する公立機関として
   世界的に著名であるNFBは、それ故にカナダに必要であるとカナダ国民に認められること。
   The NFB is recognized as being indispensable to all Canadians as the world-renowned
   public producer and distributor of audiovisual works that are socially relevant
   and innovative.


NFBは単なるファンド、資金提供者ではなく、「後世のために、映画の芸術形式を高める、斬新で革新的な作品を生み出すプロデューサー(制作者)であり、ディストリビューター(配給者)である」、「文化的には価値が高いが、奨励・援助がなければ創作され得ない作品への政府支援のモデル」であると、ページ氏とタンゲ氏は繰り返した。

実際、NFBの歴史はそれを物語る。1941年にイギリス人のノーマン・マクラレンが設立したアニメーションスタジオでは、“作家主義の(作家性のある)アニメーション”というマクラレンが拓いた道が今でも守られている。それ故、NFBは世界のアニメーション作家の憧れの的となり、長らく内外から数多の作家を呼び寄せてきた。

しかし90年代半ば、深刻な財政危機に陥ったカナダ政府は歳出削減をおこない、NFBは影響を受けた。さらに、アニメーションを取り巻く環境が激変した。NFBが設立された頃のカナダには、映画やアニメーションの産業など存在しなかった。その後、アメリカの映画産業の隆盛はカナダにも恩恵をもたらした。今日、映画・アニメーションは成功した産業(substantial industry)として、カナダでも重視される。

カナダでアニメーションが普及し、商業制作が活発になると、NFB作品には“古くさい・・・”というイメージがつきまとうようになる。多民族社会のカナダを紹介するには、芸術性や先進性だけでなく、啓発的、教育的な作品も制作する。NFB作品はテレビや学校、図書館で観ることができる分、こども時代に抱いた印象は後を引く。

NFBは低迷した。予算削減により専属作家制は廃止され、一時代を築いた作家たちはNFBを去った。若い作家の中にはNFBを倦厭する者も現れた。NFB存続の危機すら囁かれた。

しかし、2000年代になるとNFBは復活する。少なくとも、アカデミー賞を始め、世界の映画祭という表舞台にNFBは返り咲いた。世界的に著名な作家たちが、「NFBがなければ、自分の作品は存在しなかった」と讃える(記念パンフレットP6?13参照)。

この復活を担ったのが、ナショナルセンターとしての自負であり、NFBのプロデュース力である。

■NFBの独自性

NFBのプロデューサーらは、「NFBはプロデューサーであって、単なるファンド(資金提供者)ではない」、そして「NFBは商業分野と競合しない」と強調する。実際NFBが対象とするジャンルは、採算性の低いドキュメンタリーと短編アニメーションで、民間で活況な長編アニメーション映画やテレビシリーズからは手を引いている。

NFBでは、年間に百数十のドキュメンタリーと短編アニメーションのプロジェクトが進行している。制作期間は18ヶ月から最長でも2年間を適切とするが、中には数年を費やす短編プロジェクトもある。NFBは、完成締切よりも作家主義や作品の質を優先する傾向が強い。したがって、NFBの予算編成は制作実態に即し柔軟である。

カナダは、NFBのような文化機関を通じて、才能豊かな人たちが新しいアイデアや映像技法などを試す実験的環境が整っている。米国出身のページ氏は、「国立機関がカオス的な創造プロセスを奨励してきた。NFBにアニメーション部門を設立したノーマン・マクラレンの影響だ。マクラレンは、自分の創造的エネルギーを十二分に示しただけでなく、クレージーで、ユニークな映画が上手くいくという成功例を示した」とNFBを言い現した。

NFBは、その存在意義に適うよう、社会の変化に応じた。アニメーションスタジオは次の活動を重視する:
? 外部の作家・監督、インディペンデント(独立系)の作家やスタジオへの制作機会の提供
? カナダの(カナダに所在する)、若手への支援
? NFB全出資のプロジェクトだけでなく、外部との共同制作
? 国際共同制作
本事業では、ページ氏とタンゲ氏に「インディペンデント(独立系)作家、スタジオの振興および国際進出」と「若手への支援」そして、「国際共同制作」を中心に発表していただいた。

■アニメーションスタジオのシステム、若手支援プログラム

NFBのアニメーション部門は、英語とフランス語というカナダの2公用語に基づき、「イングリッシュ・アニメーションスタジオ(英語スタジオ)」と、1967年に設置された「フレンチ・アニメーションスタジオ(仏語スタジオ)」に分かれる。現在、両スタジオはリソースを共用し交流するが、プロデューサーと予算は分かれる。また、仏語スタジオは30年近く前から、仏語圏の若手作家への支援を担ってきた。


英語スタジオ/English Animation Studio
本部:モントリオール
エグゼクティブ・プロデューサー:David Verrall
プロデューサー:Michael Fukushima、Marcy Page
国内のアニメーションスタジオ:
  バンクーバー:Martin Rose(プロデューサー)
  ウィニペグ:Derek Mazur(プロデューサー/エグゼクティブ・プロデューサー)
若手支援プログラム:HotHouse
2004年?。全国から志望者を募り、NFB本部で12週間、プロデューサーや指導作家の下で1?2分間の短編を制作する。技術・芸術的進歩だけでなく、指導を受けながら制作の全行程を体験し、プロとしての独り立ちの糧とする。
募集は数名。制作は作家単位だが、期間中はチーム活動もする。
次回は2010年、HotHouse 6。
スタジオの特徴:マクラレンの作家主義を守り、多様な表現を追求する作家が活躍する。近年のオスカー受賞作『ライアン』(クリス・ランドレス監督)、『デンマークの詩人』(トーリル・コーヴェ監督)を送り出す。


仏語スタジオ/Studio Animation et Jeunesse
本部:モントリオール
エグゼクティブ・プロデューサー:Rene Chenier
プロデューサー:Marc Bertrand、Julie Roy
若手支援プログラム:Cineaste recherche(e)
1980年?。仏語圏の若手に初監督作品を制作する機会を提供する。
毎回1作家/プロジェクトを選び、臨時職員としてNFBに受け入れる。完成作はNFB作品として配給される。出身作家の多くはプロとして活躍しており、登竜門として機能する。彼らはNFBとの関係を保ち、2,3作を制作することもある。
第19回が制作進行中(08?09年)。
スタジオの特徴:マクラレンとルネ・ジョドワン(Rene Jodoin)の作家主義を踏襲し、実験的方向性を推し進め、ジャック・ドルーアン、コ・ホードマンなどの多様な技法を得意とする作家が活躍。女性作家の活躍でも世界を先駆けた。

NFBは、インディペンデント(独立系)監督・作家への支援として「FAP – Filmmaker Assistance Program」というテクニカルサポートをおこなっている。これは、外部の制作者がNFBの技術スタッフと撮影・ポストプロダクション等の機材を利用して、作品を完成させることができる制度だ。資金ではなく、3,000から5,000加ドル相当のサポートを提供する。カナダ国内のNFBスタジオで利用できる。FAPを利用できるのは、カナダ市民あるいはカナダ在住の移民(一時的な渡航者は対象外)の監督・作家で、学生は申請できない。さらに、初監督や2作目を制作する新進監督を対象とする。ドキュメンタリー、短編ドラマ、アニメーションの制作で利用できる。

NFBはカナダ政府の財政健全化のため、制作に費やせる予算が減少した。そのため、経験豊かな監督・作家を起用しづらくなった。そこで、新進監督との制作が増え、制作支援プログラムを整えたという側面がある。

■近年増加する共同制作、国際共同制作

ページ氏に「共同制作は増えているか?」と問うと、「当然増えている」と即座に返ってきた。

NFBの共同制作は、アニメーションよりもドキュメンタリーの比率が高い。しかしアニメーションは国際共同制作が多い。アニメーションは、その非原語性が国際共同制作に向いているからだ。そして、時間的、地理的、文化的制約が少ない、あるいは(政治家や政府に)政治メッセージ性が低いと思われており、政治的圧力を受けにくいという面もある。加えてASIFA(国際アニメーションフィルム協会)のようなアニメーション作家たちの国際組織が、国境を越えたネットワークを広げ、国際連携しやすい。映画祭が世界各地で、国際的に開催され、関係者が定期的に出会う場がある。

NFBは、アニメーションとドキュメンタリーを合わせて、年間で百数十作品の制作をおこなう。
07年?08年のアニメーションの共同制作は次のとおり:
  英語スタジオ 25本
  仏語スタジオ 7本
この中に9本の国際共同制作が含まれる(Folimage、Helium Films、Connections Productions、Wapos Bay Productions)。

また08年?09年では:
  英語スタジオ 14本
  仏語スタジオ 10本
4本の国際共同制作が含まれる(Folimage、Global Mechanic Inc.、Studio GDS、Musi Vision)。

山村浩二監督が、NFBプロデューサーのマイケル・フクシマ氏と2010年の完成を目指す『Muybridge’s Strings』も、このNFB国際共同制作のリストに加わるのである。

ページ氏自身は現在12本を進行中で、内7本は国際共同制作である。
制作中:Higglety, Pigglety Pop (米国/カナダ)、Rose and Violet (カナダ/ルクセンブルグ)、Backward Story of O (カナダ/オランダ)
企画中:Me & My Moulton (カナダ/ノルウェー)、White Circus (カナダ/ドイツ/ポーランド)、 She Doesn’t Yet Love (米国/カナダ/フランス)、Neuropolis (相手国検討中)
残り3本は国内の共同制作、2本のみがNFB全額出資である。

ページ氏の2000年代の成功作では、オスカーを受賞した『The Danish Poet(デンマークの詩人)』はカナダとノルウェーの合作、ノルウェー出身のトーリル・コーヴェ監督を起用した。また、『Ryan(ライアン)』は、トロントのCopper Heart Entertainmentとの共同制作で、アメリカ出身のクリス・ランドレス監督作品である。

共同制作が増えるのは、NFBだけでない。経済環境の変化、アニメーションの制作や市場の拡大あるいは成熟は、低予算か巨大プロジェクトかと、中規模予算のプロジェクトを成立しづらくする。そこで制作の最善策として、共同プロデューサーを立て、共同出資が増えるのである。この共同制作は、日本で一般的な制作委員会方式とは異なり、プロデューサーや制作会社を中心に構成される。テレビ、劇場、パッケージ販売などの流通に対しては、プリセールスや出資要請、あるいは完成後の権利販売をおこない、作品権利はプロデューサーが保持する。

さらに、カナダにはTelefilm Canadaという連邦政府機関、ケベック州のSODECのような州政府機関、Canada Council for the Artsのようなアーティスト支援機関、さらに州・大都市の産業振興の助成、あるいはHarold Greenberg Fundなどの民間ファンドなど、多層・多様な資金調達がある。国営や民営のテレビ局も重要な出資者だ。共同制作の相手国に類似した仕組みがあれば、それらを享受できる。なぜなら、このような制度利用はプロデューサーが居住国で手続するからだ。

国際共同制作は、ページ氏の言のとおり、アニメーションに向く手法である。国際的スキームを制作段階で結成すれば、国外への流通も容易となる。とりわけ欧州では、テレビ局が出資者となり、テレビ放送権の販売が国際共同制作の魅力となる。

■国際共同制作パートナーの条件

国際共同制作の条件としては、カナダが共同制作条約を結んでいるか、相手側に資金提供や税控除などのインセンティブがあるかだ。ちなみにカナダは53ヵ国と条約を結んでいる。NFBのアニメーションで共同制作頻度の高いのは、ノルウェー、オランダ、英国、フランス。さらにドイツ、ポーランド、ルクセンブルグは近年増加している。米国とは条約を結んでおらず、国際共同制作の相手としては難がある。

Film Institute(映画協会)あるいは準じる機関があることもポイントだ。資金だけでなく様々な支援の窓口が一本化されていることが多いからだ。ノルウェーと共同制作した『My Grandmother Ironed the King's Shirts(王様のシャツにアイロンをかけたのは、わたしのおばあさん)』では、ページ氏はノルウェーに人的ネットワークがなかった。共同制作のパートナーを見つけるのに、現地カナダ大使館やノルウェー映画協会の協力を得た。

映画協会のような公的機関とは、文化的、芸術的重要性を重視するという観点を共有できる。短編アニメーションは市場に限りがある。商業的価値が優先される国々との間では、NFBが共同制作を組むのが難しいことがある。

NFBの短編アニメーションの制作予算は10万?80万加ドル(1,000万?8,000万円)を目安とする。NFBの共同制作出資比率は49%以下とされるが、過半数を超すこともある。民間プロデューサーとの共同制作では、NFBプロデューサーは主要パートナー選定、芸術面の判断、利害関係者、資金調達や予算の決定に加わる。権利所有は出資比率で決まり、出資回収ルールは民間と変わらぬ。

なお、NFBの技術サポートや設備利用が共同制作パートナーには魅力的だ。

■プロデューサーの役割、マーケティングマネージャーの役割

NFBのアニメーションスタジオは年8回のプロジェクト検討会議で80本ほどの制作を決定する。検討委員会は、エグゼクティブ・プロデューサー、プロデューサー、コーディネーター、マーケティングマネージャーで構成される。プロジェクトの候補は、個々のプロデューサーが選び出す。HotHouseやCineaste recherche(e)は新しい才能やプロジェクトと出会う機会である。

プロデューサーとエグゼクティブ・プロデューサーの役割は、民間スタジオと大差ない。プロデューサーは制作現場に近く、エグゼクティブ・プロデューサーは大局的な判断を下す。民間と異なるといえば、採算性や収益性よりも、文化的、芸術的あるいは社会的な価値に重きを置くことであろう。そのため、内容やスケジュールで、監督・作家の自由度が高い。

プロデューサーと監督・作家との間の意見相違、あるいは国際共同制作での表現や文化的価値観の混乱などは「解決の策が見つかる」と、ページ氏は言う。プロデューサーは監督ら制作現場の創造的な判断・自由を優先するものの、率直な批評家であることは忘れない。そして信頼関係と合意は欠かせない。チーム以外のアニメーターたちの協力を仰ぐこともある。NFBが持つ監督・作家とのネットワークが機能する。彼らのアドバイスや提案が制作チームの混乱解決の糸口となることがある。

マーケティングマネージャーの役割は基本的に民間と変わらない。NFB作品をより広く、より多く世に出すための広報宣伝、PR促進ツールの制作やマーケティングフィードバックである。英語と仏語スタジオのマーケティングチームには計23名のスペシャリストがいる。短編アニメーションは販路が限られるし、NFBはヒット至上主義ではない。マーケティングマネージャーが重きを置くのは主要映画祭、とりわけオスカーレースにNFB作品を送り出すことだ。映画祭出品は計画的、効果的におこなう。映画祭での評価が、NFB作品の評判を高め、NFBの存在意義をも保つからだ。ちなみにNFB作品として映画祭で受賞すると、賞金は監督へ回り、NFBには入らない。

マーケティングマネージャーはプロジェクト検討会議に出席し、ターゲット分析などをフィードバックする。マーケティングマネージャーが制作チームの信頼を得て、プロデューサーや監督らと良好な関係であれば、作品の露出や流通を考えた制作ができる。

■次世代作家の発掘へ ― ネットワークやクリエイティブコミュニティの重要性

クリス・ランドレス監督の『ライアン』は、ネットワークやクリエイティブコミュニティの重要性を示す事例として紹介された。NFBとCopper Heart Entertainmentとの合作というだけでなく、トロントのCGアニメーションスタジオC.O.R.Eとアニメーション校Seneca Collegeとのクリエイティブパートナーシップが実を結んだ。ランドレス監督は、創作者として優れるだけでなく、指導者としての才もあるとページ氏は語る。Seneca Collegeの学生たちはランドレス監督の下で制作協力をした。その場を提供したのがCGアニメーション大手のC.O.R.Eである。最新作『The Spine(背骨)』も同様におこなわれた。この過程で若いアニメーターは力を付けた。そしてページ氏は、ランドレス監督の次回作として長編作品を準備中だ。

NFBが重視するのは、作家が1作品に留まらず、2作、3作と自主的に創り続けることだ。それを支えるプロデューサーはパッチワークのようにパートナーシップを組み、ネットワークを広げる。

今日のNFBは、教育機関、エージェンシー、そして急成長する映画/アニメーション産業界が融合するコミュニティの中にある。NFBは、後進のための環境を整える。ともするとビジネスや産業が優先され勝ちだが、文化・芸術的な実験環境を支え、創作力や独創力を涵養しなければ、産業の人材も枯渇する。

NFB職員は、そのマンデイト(本報告書P16)に忠実たらんとする。その姿勢が、カナダだけでなく、世界のクリエイティブコミュニティに貢献し、NFBを取り巻くネットワークを充実させる。ページ氏とタンゲ氏の講演は、その自負に溢れていた。


2.CAFの提言
CAFで交わされた議論から、日本のアニメーションの国際展開と国際共同制作への策を呈する。

◎収益性優先だけでなく、アニメーション文化・芸術を高めるプロジェクトへの民間出資を促すインセンティブ
山村浩二監督作品『Muybridge’s Strings』へのNFB出資は、“山村浩二”という世界的に著名なアニメーション作家ありきのプロジェクトとして決定された。
NFBには、1)カナダ国内では、ベテラン作家とだけでなく、経験の少ない作家ともプロジェクトをおこなう、2)国際的には、成功の可能性の高い作品・作家、ベテラン作家を優先するという共同制作のガイドラインがある。すなわち山村浩二氏は、アニメーション文化を高めることができる国際級の作家ということである。にもかかわらず、日本では資金調達に苦労せねばならない。
山村監督とNFBの国際共同制作を日本側でプロデュースする、ポリゴンピクチュアズの塩田周三氏は「短編アニメーションへの出資に、日本では大義名分がいる」として、民間資金調達の難しさを指摘した。

◎アニメーション制作実態に適うよう、公的助成の制度的改善
◎有用情報を散在させない、ワンストップサービス
日本の公的助成に関し塩田氏は、「単年度主義ため、作品の完成年にしか助成申請ができない」、「本当に必要なとき、たとえば企画開発段階のように、民間資金が入りにくい段階で公的助成が使えない」と、現行制度の欠点を挙げた。
また情報が散在し、塩田氏は公的機関の扉を一つ一つ叩かねばならなかった。

◎共同制作条約の締結国増加による、互恵的なインセンティブの整備
◎政府間の条約だけでなく、日本のインディペンデントが国際的な座組に参加したり、日本の企画に外資や海外の優秀な人材を呼び込むインセンティブの充実

ページ氏は、国際共同制作の相手国を選ぶ条件として、共同制作条約やFilm Institute(映画協会)などの一元化された窓口を挙げた。
ユニジャパンの西村隆氏は、活況に見える日本映画の弱さとして、一部の人気作に集客も収益も集中する現状を指摘した。その上で、国際共同制作はインディペンデント映画の活路とした。

◎内外のクリエイティブピープル、クリエイティブリーダーが集い、分野を超えた交流が恒常的にできる、ネットワークの場
◎若手たちが作家性を磨ける創作への支援

シンポジウムに出演した青木純氏とTANGE FILMSの森下征治氏、丹羽直樹氏は大学卒業後それぞれのスタジオを立ち上げた。公的助成を安易に当てにせず、セルフプロデュースをしながら、受注仕事を中心に活動する。森下氏は、プロデューサーとして自主プロジェクトの開発に手を広げる。企画書作成からパートナー探しまで手探りである。青木氏も森下氏らも、学生時代の作品はあるものの、独立後に自主プロジェクトを完成させる余裕はない。初監督作品を手元資金や民間出資・融資だけに頼らざるを得ないのが日本の実情だ。
京都のトークショーに出演した、アニメーション作家の米正万也氏は、日本ではなく、多様な創作実験の場を求め、助成が充実する欧州が活動の場だ。

◎アニメーション/映画界として新進若手やインディペンデントを支援する、包括的な環境
ページ氏とタンゲ氏は、新進作家らとの交流で、商業的に活動する作家や学生の作品講評をおこなった。日本のアニメーションは巷間で言われるほど世界に出ているわけではない。国際映画祭に日本作品が出品されないことはざらにある。国際映画祭出品作の技術水準は高い。脚本開発や編集、ポストプロダクションで見劣りする日本作品も少なくない。今回講評された映像には、“一つの作品”としての完成度は高くなくとも、両氏が新しい表現として高く評価したものがある。
HotHouseのような支援を聞くと、「日本でも」という声が出る。しかし、NFBがHotHouseをし、Cineaste recherche(e)で初監督作品を完全にフォローし、FAPのテクニカルサービスができるのは、技術スタッフと制作環境、マーケティングや権利処理などの間接部門を持つナショナルセンターとして機能しているからだ。

CAFでは、NFBのプロデュース力を紹介した。多民族・多文化の国・カナダは多様な価値観を受け入れてきた。カナダが文化に重きを置き、NFBという映像のナショナルセンターを維持するのは、カナダの歴史にも由来する。収益性は二の次に、文化・芸術に重きを置く作品や作家への支援は、市場経済では無謀に見える。しかし、カナダという一国に留まらず、映画・アニメーション100年の歴史は、表現実験の繰り返し、その進歩の足跡であったのだ。

今回の議論で分かったのは、NFBのプロデュース力に秘策はないということだ。プロデューサーはプロデューサーの役目を、マーケティングマネージャーはその任を、そしてNFBはナショナルセンターの機能を忠実に、そして創作者たちと共に果たすということだ。ページ氏とタンゲ氏が強調したのは、人的ネットワークの大切さだった。多様な才能を持つ、クリエイティブな人たちが自由に交流し、刺激し合うコミュニティ。そこから、新しいアイデアが生まれ、プロジェクトを実現させる力や知恵が集まるということだろう。NFBは、その設立から一貫して、さまざまな人たちのネットワークやコミュニティの要であろうとしてきた。NFBという「ナショナルセンターのプロデュース力」から得ることは少なくないように思う。日本でも、国際展開の時代に、日本に相応しいナショナルセンターとは何かを考えてみてはどうだろうか。

テーマ:映像・アニメーション - ジャンル:学問・文化・芸術

[2009/12/05 11:41] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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